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2006年07月13日

●評価モデルは継続性の原則なのか?

ある企業のストック・オプション発行決議の決議案作成のコンサルティングを依頼されました。今年から決議案においては評価の算定技法(評価モデル)を明記する必要があり、監査法人の担当者に問い合わせたところ、「今回採用した算定技法は、「継続性の原則」に則り、正当な理由がない限り変更できない。」との意見があったようです。

確かに一度採用した会計方針は、「正当な理由」がない限り、変更してはならないのが原則です。ここでの会計方針とは棚卸資産の評価方法や、固定資産の減価償却の方法を指します。
この監査法人の担当者のように、評価の算定技法を「会計方針」と考える実務担当者がかなり多くいるようです。しかし、前述のとおりオプションの評価モデルは評価額を出すプロセスは異なっていても、評価の基になる考え方は共通しており、入力する変数が同じであれば、どの評価モデルも同じ結果を導き出します。例えれば、ソロバンで計算するか電卓を使うかの違いと言えるでしょう。 この事実を知らないため、「継続性の原則」の濫用が横行しているのでしょう。このように評価方法をブラック・ショールズモデルのような汎用性の低いものに固定化してしまうと、今後ストック・オプションの発行条件を変えようとするときの足かせになる危険性があります。
「継続性の原則」を守るために発行条件を変更しないという、本末転倒な状況が出てくるかもしれません。