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2006年07月21日

●希薄化:最も聡明な株主からの警鐘

稀代の投資家であるウォーレン・バフェットもストック・オプション発行が与える企業価値への影響について、今から8年も前の1998年のバークシャ・ハザウェイの年次報告書にて、洞察に満ちたコメントを載せています。 またストック・オプション評価を阻もうとする、産業界の動きに厳しく警鐘を鳴らしています。

以下はその年次報告を一部抄訳したものです。

『どんなに大量のストック・オプションが発行され、その費用が莫大に増加しているとしても、企業は一向に困らない。何故ならば既存の会計原則は、経営者に二つの選択を提供しているからだ。
 従業員に報酬を支払い、費用計上するか
 従業員に報酬を支払い、費用は無視するか
このようなオプション会計上の処理の潜む不可思議は、彼らにストック・オプションという打ち出の小槌を与え、ストック・オプションの発行は急拡大したのだ。またこの安易な選択は、株主の利益を著しく損なう。ストック・オプションが適切に構築されるならば、たぶんストック・オプションは、経営者へ対しての最高の(かつ理想的な)インセンティブ・プランであろう。しかし、ストック・オプションは(適切な使われ方がされないと)、しばしば、「気まぐれな報酬プラン」であったり「非効率な動機付けプラン」であったりすることがあり、株主に甚だ高価な代償を支払わせることがある。

オプションのメリットが何であるかはさておいて、その会計処置はばかげている。我々が今年GEICOに支払う広告費を1億9000万ドルと仮定しよう。 我々は、この広告に現金を払う代わりに、満期10年のat-the-marketバークシアオプションをメディアに発行したとしよう。バークシアは今年は広告の費はかからなかった、またこのコストに対し課税すべきではないと、誰が考えるだろうか。
我々は、ストック・オプションを発行している企業への投資においては、
会計報告上の利益から、ストック・オプションの発行コスト分を差し引いて評価している。単純に、彼らが発行しているストック・オプションを市場で売却したときに入るべき金額を、差し引いているだけだ。
ここ数年の我々の試算によると、ストック・オプション発行費用を差し引くと、報告された1株当たりの利益が5%、10%減少した。

数年前、このページで、3つの質問をしましたが、我々はまだ(企業から)返事をまだ受け取っていない。
「オプションが報酬の一形態でないのなら、いったい何か?」
「報酬が支出でないならば、それは何か?」
「支出が所得の計算に使われないならば、一体それは何であるべきか?」』
 
このように、聡明な株主たちは会計基準の導入の是非にかかわらず、ストック・オプション発行が企業価値に与える影響を注視しているのです。