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2006年11月23日

●財務諸表におけるストックオプション費用の表示

ストックオプション会計基準では、ストックオプションの費用計上を要求しています。このストックオプション費用ですが、実務上は“株式報酬費用”として計上しています。

 この株式報酬費用ですが、費用である以上、損益計算書上は�売上原価、�販売費及び一般管理費、�営業外費用、�特別損失のいずれかに計上されます。そこで、ここでは株式報酬費用がこれらの区分のいずれに計上されるのか、それぞれの可能性を検討していきます。

�売上原価に計上されるケース
 一般的にストックオプションは、従業員等に対する報酬として利用されるケースがほとんどです。そのため、多くのケースでは�販売費及び一般管理費に計上されると考えられ、売上原価に計上されるケースはあまりないといえます。
 しかし、たとえばストックオプション発行企業がメーカーで、製造関係者にストックオプションを付与する場合は、売上原価に計上される可能性があります。これは、ストックオプション費用が製造原価報告書を経由して、製品勘定から売上原価として損益計算書に計上されるためです。
 このほか、出版社や音楽会社が、作家やアーティストに対する報酬としてストックオプションを利用するケースでも、同様に売上原価に計上される可能性があります。

�販売費及び一般管理費に計上されるケース
 多くのストックオプションは、従業員等に対するインセンティブとして利用されます。そのため、ストックオプション費用の性質は、追加的な労働サービスの提供に対する報酬と考えられ、人件費と同様の性格を有していると考えられます。したがって、従業員等に対するインセンティブを目的としたストックオプションは、通常の人件費と同様に「販売費及び一般管理費」に計上されます。

�営業外費用に計上されるケース
 ストックオプション費用を営業外費用に計上するケースは極めて稀だと考えられますが、自社株式オプション(※)を対価として財貨を取得した際に、間接的に営業外費用に計上される可能性は存在します。たとえば、企業が自社株式オプションを対価として投資不動産を取得した場合などがそうです。この場合、投資不動産に関する減価償却費が営業外減価償却費として計上されますが、その性格は株式報酬費用に類似すると考えられます。

�特別損失に計上されるケース
 ストックオプションは将来の追加的なサービスの提供を期待して付与する以上、付与時点では将来の便益が存在すると考えられます。したがって、ストックオプション費用を特別損失に計上するケースは実務上ほとんど存在しないと考えられます。ただし、�のケースと同様に、自社株式オプションを対価として財貨を取得した場合、間接的に特別損失に計上される可能性は存在します。


※自社株式オプションとは、自社の株式を原資産とするコール・オプションをいいます。この自社株式オプションのうち、特に企業が従業員等に対して報酬として付与するものがストックオプションです。したがって、自社株式オプションはストックオプションを含むより広い概念です。