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2006年07月14日

●行使期限前行使は合理的な行動なのか?

ストックオプションの多くはアメリカンタイプと呼ばれる、満期日までの間に一定の権利行使期間が定められていることが多いようです。それに対し、ヨーロピアンタイプと言われるオプションのように、権利行使できる日は最終日(満期日)のみに限定されているものもあります。

ではアメリカンとヨーロピアンはどちらが得なのでしょうか。
直感的に考えれば、権利行使期間内なら何時でも権利行使可能なアメリカンタイプのオプションのほうが有利に見えます。ではその事実関係を、例を挙げて検証してみましょう。
A,B二人とも入社5年目で2年前にもらったストックオプションの権利行使期間が来週に迫っています。今AとBで権利行使をいつするかで議論しています。

Aは早期に権利行使をすることに賛成であり、その論拠は
・今が上場以来の高値であり、今行使するべきである。 
・早く現金を手元にほしい。
・この後株価が下がってしまえば、行使しなかったことを後悔する。

Bは
・企業業績は良く、まだまだ株価は上昇する可能性がある。
・特に現金が今必要ではない
・今売ってしまって、その後上昇したとき後悔する

二人の争点は、今後の株価に対しての見方(楽観、悲観)と今お金がいるか否かがポイントであり双方の考え方はそれぞれ、至極妥当性があるように見えます。

しかし、オプション理論に則り合理的に行動する市場参加者であれば、期限前行使は原則しません、なぜならば残りの時間的価値を放棄することになるからです。自らの投資収益を極大化することを求められているプロフェッショナルな投資家(機関投資家、ヘッジファンドの運用担当者など)がそのような行為にでれば、即刻その職を失うことでしょう。 しかし、ストックオプションを取得者の多くは、発行企業の社員や役員である「一般の個人投資家」であるため必ずしも合理的な行動はとらないことがあります。彼らは自らの財政事情やストックオプション価値の仕組みに対する知識の欠如、またはストックオプションは不労所得であるとの考え方から、安易に時間的価値を放棄して、期限前実行する傾向があります。しかし、このような予測困難かつ非合理的行動まで、評価の算定いれようとするもくろみは金融工学の評価スタンスとは温度差があるように思われます。