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2006年08月04日

●新株予約権による資金調達の急増

日経金融新聞によると、新株予約権を証券会社に割り当てて資金調達する企業の数は、この二年間で約40社。権利行使した場合の調達額は約2000億円に達することが分かりました。

新株予約権の価格は、権利行使価格の変化や償還条項の価値なども加味して計算するため、算出は金融工学を用いた手法に依らざるをえません。一般的に知られているブラック・ショールズ式などが全く使えない類のオプション評価が求められるのです。
この専門知識を要する業務は、証券会社などの一部の金融機関が、その評価のノウハウを持っています。しかし、証券会社に割り当てる新株予約権の評価自体を、割当先の証券会社自身が行うわけにはいかないでしょう。

そんな中、第三者的な位置づけのコンサルティング会社が急増し、独立性・中立性が求められる評価業務を実施しているところをよく見かけます。しかし、その評価には、前述したとおり金融工学の専門知識が必要であり、会計分野への精通も求められる要素です。いい加減な評価サービスを行う機関も実際多くありました。

2006年1月、TRNコーポレーション(3351)が決議した新株予約権は、有利発行を理由に東京地裁により発行を差し止めの仮処分を受けました。これは、当初の発行決議時において、第三者機関であるコンサルティング会社に新株予約権の価値算定を依頼したのが始まりです。TRNはコンサルティング会社の評価結果を参考に発行価格を決めたのですが、裁判所には認められず、結果的に同社は新株予約権発行を断念。同社の株価は、そのタイミングを皮切りに約半分まで落ちました。
また、他にもサンテレホン(8083)が証券会社に割り当てた新株予約権も、2006年6月、株主による発行差止仮処分の請求により、その発行は有利発行として認められ、結果的に中止されています。

今後は、株主に対する負のアナウンスメント効果を引き起こさないよう、新株予約権の発行および評価を適正に実施することが一層求められるのでしょう。