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2006年08月24日

●公正価値の算定基準日は付与日であるべきか

 ストックオプション会計基準では、ストックオプションの公正価値を付与日時点において算定し、その後は条件変更等がなければ見直さないこととしています。しかし、そのような会計処理がなされると、場合によっては希薄化の度合いが適切に把握されないおそれが生じます。

 市場で取引されるオプション取引は、取引後も原則的には時価評価されます。もしそうしなければ、市場の動きに影響を受けるオプション価格を、満期日までの期間において正確に把握することができないからです。
 これは会社が従業員等に対して発行するストックオプションについても同様で、もしオプションの時価評価を継続的に行わなければ、権利行使時にいきなり希薄化が判明することになってしまいます。このため、付与日における費用化額は暫定的なものとし、権利行使時の公正価値を最終的な費用計上額にすべきとも考えられます。
 実際、この問題はストックオプション会計基準策定にあたっても論点とされていました。具体的には、ストックオプション会計基準50項において「ストックオプションの公正な評価単価は常に変動しているため、その算定の基準日が問題となる。」として取り上げられています。
 ところが、このような論点に対するストックオプション会計基準での取り扱いは、付与日における公正な評価単価を算定することとされました。これは、付与日以後のストックオプションの公正な評価単価の変動は、サービスの価値とは直接的な関係を有しないもの考えられているためです。つまり、企業と従業員等がともに経済合理性を有しているのであれば、ストックオプションと労働サービスの提供は等価交換されると考えられるところ、両者の交換時点は付与日であると解釈できるためです。
 したがって、現行会計基準のもとでは、ストックオプションの費用化額は付与日における公正な評価額となります。