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2006年08月04日

●ファントムストックの会計処理は?

 ストック・オプションとして新株予約権を発行する場合は、当然、ストック・オプション会計基準にしたがった会計処理が求められますが、ストック・オプション会計基準は、類似のファントム・ストックも適用対象としているのでしょうか。
 ストック・オプションの会計処理を扱っている他の国際的な会計基準(FAS123R等)は、ファントム・ストック等も適用対象としています。

 そもそもファントム・ストックとは、どのようなものなのでしょうか。ファントム・ストックとは、「株式を付与したと仮定し(実際には付与しない)、一定期間の経過後に売却したものとして、配当相当分やキャピタルゲインを現金で支払う」報酬制度です。ストック・オプションと同様の効果を狙った報酬制度の一つです。
 

 しかしながら、日本のストック・オプション会計基準では、これらは対象としていません。 これについては、次の解説があります。

(ストック・オプション会計基準28項)
『 企業が従業員等に付与する報酬の額や、財貨又はサービスの取得に際して付与する対価の額が、何らかの形で自社の株式の市場価格に連動するものであっても、自社株式オプションや自社の株式を用いない限り、本会計基準の適用対象とはならない。
 ストック・オプションに関する会計処理を取り扱っている他の国際的な会計基準においては、取得の対価として自社株式オプションや自社の株式を用いる取引のみならず、対価として現金を支払うものの、その金額が契約等により自社の株式の市場価格と連動することとされている取引や、企業又は従業員等の選択により、自社の株式又はその市場価格に基づく価額に相当する現金が交付される取引についても取り扱っているものがある。
 しかし、第23 項で述べたとおり、本会計基準は、我が国におけるストック・オプション制度の運用の実態に即して、その会計処理を明らかにする必要性に応えることを主な目的とするものであることから、自社株式オプションや自社の株式を財貨又はサービスの取得の対価とする取引に限って検討を行った。』

 上記の解説は、ファントム・ストックを対象としない理由を明らかにしているわけではなく、わが国では、新株予約権のストック・オプションとしての利用が活発化していることを踏まえ、新株予約権を利用したストック・オプションの会計処理を明らかにすることが急務であったことから、今回の基準制定では、ファントム・ストック等は対象とせずに議論した結果であると説明しています。
 したがって、わが国においても、ファントム・ストック等の株式連動型報酬制度が増えてきた場合、これらを対象とした会計基準もいずれ制定されることが予想されます。