2006年08月24日

未公開企業におけるS/Oの会計処理1

 ストックオプションの公正な評価額を算定するに当たっては、株価変動性や付与日時点の株価が必要になりますが、未公開企業ではそれらの観察が事実上不可能となっています。それでは未公開企業におけるストックオプションはどのように会計処理されるのでしょうか。

 そもそも、ストックオプションの公正な評価単価を算定する際には、株価変動性(ボラティリティ)を考慮しなければなりませんが、これは過去の株価実績に基づく予測(ヒストリカルボラティリティ)を基礎として見積もります。しかし、未公開企業の株式は上場されていないため、その見積もりは困難です。そこで、未公開企業については、ストックオプションの公正な評価単価に代え、ストックオプションの単位当たりの本源的価値を見積もることによって会計処理を行うこともストックオプション会計基準は認めています。
 ここで、「単位当たりの本源的価値」とは、算定時点においてストックオプションが権利行使されると仮定した場合の単位当たりの価値であり、当該時点におけるストックオプションの原資産である自社の株式の評価額と行使価額の差額をいいます。
 本来ならば、未公開企業であってもオプションの価値は本源的価値と時間的価値から構成されるべきですが、未公開企業については、前述の理由からこのうち時間的価値を便宜的に省略したものも認めているといってよいでしょう。この結果、未公開企業は、付与日現在でストックオプションの単位当たりの本源的価値を見積もり、その後は見直さないことになります。

2006年08月04日

ファントムストックの会計処理は?

 ストック・オプションとして新株予約権を発行する場合は、当然、ストック・オプション会計基準にしたがった会計処理が求められますが、ストック・オプション会計基準は、類似のファントム・ストックも適用対象としているのでしょうか。
 ストック・オプションの会計処理を扱っている他の国際的な会計基準(FAS123R等)は、ファントム・ストック等も適用対象としています。

 そもそもファントム・ストックとは、どのようなものなのでしょうか。ファントム・ストックとは、「株式を付与したと仮定し(実際には付与しない)、一定期間の経過後に売却したものとして、配当相当分やキャピタルゲインを現金で支払う」報酬制度です。ストック・オプションと同様の効果を狙った報酬制度の一つです。
 

 しかしながら、日本のストック・オプション会計基準では、これらは対象としていません。 これについては、次の解説があります。

(ストック・オプション会計基準28項)
『 企業が従業員等に付与する報酬の額や、財貨又はサービスの取得に際して付与する対価の額が、何らかの形で自社の株式の市場価格に連動するものであっても、自社株式オプションや自社の株式を用いない限り、本会計基準の適用対象とはならない。
 ストック・オプションに関する会計処理を取り扱っている他の国際的な会計基準においては、取得の対価として自社株式オプションや自社の株式を用いる取引のみならず、対価として現金を支払うものの、その金額が契約等により自社の株式の市場価格と連動することとされている取引や、企業又は従業員等の選択により、自社の株式又はその市場価格に基づく価額に相当する現金が交付される取引についても取り扱っているものがある。
 しかし、第23 項で述べたとおり、本会計基準は、我が国におけるストック・オプション制度の運用の実態に即して、その会計処理を明らかにする必要性に応えることを主な目的とするものであることから、自社株式オプションや自社の株式を財貨又はサービスの取得の対価とする取引に限って検討を行った。』

 上記の解説は、ファントム・ストックを対象としない理由を明らかにしているわけではなく、わが国では、新株予約権のストック・オプションとしての利用が活発化していることを踏まえ、新株予約権を利用したストック・オプションの会計処理を明らかにすることが急務であったことから、今回の基準制定では、ファントム・ストック等は対象とせずに議論した結果であると説明しています。
 したがって、わが国においても、ファントム・ストック等の株式連動型報酬制度が増えてきた場合、これらを対象とした会計基準もいずれ制定されることが予想されます。