2008年03月04日

●ストックオプションの発行と金融商品取引法における開示手続

 上場企業が、取締役あるいは従業員等にストックオプションを付与する場合には、会社法においても、複雑な手続きがありますが、ここでは、会社法における公開会社(いわゆる上場企業)が、ストックオプションを付与する場合の金融商品取引法における開示の手続きについて説明したいと思います。
会社法における公開会社が、取締役会の決議によって、ストックオプションの発行に関する募集事項を定めた場合、その割当ての2週間前までに、株主に対して、この募集事項を通知・公告しなければなりません。しかしながら、このような募集事項の通知・公告を要しないとされる場合があります。それは、割当ての2週間前までに、金融商品取引法の規定に基づいて、次に掲げる書類(会社法第238条第1項に規定する募集事項に相当する事項をその内容としているものに限る)の届出または提出をしている場合(当該書類に記載すべき事項を金融商品取引法の規定に基づき電磁的方法により提供している場合を含む)とされます(会社法施行規則第53条)。
 その書類とは、以下の書類を指します。
 (1) 金融商品取引法第4条第1項または第2項の届出をする場合における同法第5条第1項の届出書。
 (2) 金融商品取引法第23条の3第1項に規定する発行登録書および同法第23条の8第1項に規定する発行登録追補書類。
 (3) 金融商品取引法第24条第1項に規定する有価証券報告書。
 (4) 金融商品取引法第24条の5第1項に規定する半期報告書。
 (5) 金融商品取引法第24条の5第4項に規定する臨時報告書。
 このうち、ストックオプションを発行する場合に、通常提出する書類は、ストックオプションの効力を適切な時期に生じさせたり、あるいはストックオプションの発行に際して、届出あるいは提出される書類とは想定できないという理由から、(1)の届出書および(5)の臨時報告書が該当することとなります。
 さらに、このような届出書および臨時報告書の届出義務が免除される場合が存在します。それは、譲渡が禁止される旨の制限が付されており、かつ発行会社あるいは100%完全子会社取締役、会計参与、監査役、執行役または使用人を相手方として、当該ストックオプションの取得勧誘または売り付け勧誘等を行う場合です(金融商品取引法施行令第2条の12および企業内容等の開示に関する内閣府令第2条第1および2項)。
 さらに、金融商品取引法では、発行価額または売出価額の総額が1億円未満の有価証券の募集または売出しの場合には、届出の義務が免除されます(金融商品取引法第4条第1項5号)。この場合の発行価額とは、ストックオプションの場合、当該新株予約権証券の発行価額または売出し価額の総額に当該新株予約権証券に係る新株予約権の行使に際して、払い込むべき金額の合計額を合算した金額とされています(企業内容等の開示に関する内閣府令第2条第3項2号)。
 したがって、有価証券報告書を提出しなければならず、上記の届出書および臨時報告書の届出義務が免除される会社に該当しない場合には、投資家保護のために必要かつ適切な会社とみて、臨時報告書を遅滞なく内閣総理大臣に対して提出しなければなりません(金融商品取引法第24条の5第4項)。
 なお、臨時報告書には、記載の事項を記載しなければなりません(企業内容等の開示に関する内閣府令第19条第2項2号二)
 (1) 新株予約権の銘柄
 (2) 発行数または売出数
 (3) 発行価格または売出価格
 (4) 発行価額の総額または売出価額の総額
 (5) 新株予約権の目的となる株式の種類および数
 (6) 新株予約権の行使に際して払い込むべき金額
 (7) 新株予約権の行使期間
 (8) 新株予約権の行使の条件
 (9) 新株予約権の行使により株券を発行する場合の当該株券の発行価格のうちの資本組入額
 (10) 新株予約権の譲渡に関する事項
 (11) 新株予約権を取得しようとする者の名称、住所、代表者の氏名、資本金または出資の額および事業の内容
 (12) 出資関係、取引関係その他これらに順ずる取得者と提出会社との間の取引
 (13) 保有期間その他の当該株券または新株予約権証券の保有に関する事項についての取得者と提出会社との間の取り決めの内容

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2007年02月23日

●ストックオプションの期限前行使と費用額

 従業員は付与されたストックオプションを、期限が満了する以前に行使することが通常です。このことを「ストックオプションの期限前行使」といいますが、会計基準では「ストックオプションの期限前行使」を費用の見積りにあたって考慮することと定められています(適用指針第13項)。

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2007年01月10日

●ストックオプション費用の測定

会計理論では、発生した費用を認識し、その後に測定することとなります。会社法改正に伴いストックオプションは費用として認識されることになりました。ここでは、ストックオプション費用の測定について解説します。

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2006年11月23日

●財務諸表におけるストックオプション費用の表示

ストックオプション会計基準では、ストックオプションの費用計上を要求しています。このストックオプション費用ですが、実務上は“株式報酬費用”として計上しています。

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2006年11月09日

●国際財務報告基準(IFRS)とストックオプション会計

 欧州連合は2005年度より国際財務報告基準(IFRS)に基づく財務報告を域内の公開会社に求めることとしました。これに伴い、欧州の証券市場に上場している日本企業は2年間の猶予を与えられ、日本基準がIFRSと同等性がなければ、2007年度より欧州に上場している日本企業にIFRSの適用が求められます。

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2006年09月08日

●取引相手等に対して付与した自社株オプションの会計処理

 会社法施行後は、従業員等に対して付与したストックオプションのみならず、財貨又はサービスの取得の対価として取引先等に対して自社株式オプションを付与する取引についても費用計上されることになりました。

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2006年09月01日

●未公開企業におけるS/Oの会計処理2

 未公開企業では、ボラティリティの観察が困難なため「単位当たりの本源的価値」をもってストックオプションの公正な評価単価に代えることが認められています。そして、「単位当たりの本源的価値」を算定するにあたっては、未公開企業の株式価値を評価する必要が生じます。

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