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2006年11月09日

●国際財務報告基準(IFRS)とストックオプション会計

 欧州連合は2005年度より国際財務報告基準(IFRS)に基づく財務報告を域内の公開会社に求めることとしました。これに伴い、欧州の証券市場に上場している日本企業は2年間の猶予を与えられ、日本基準がIFRSと同等性がなければ、2007年度より欧州に上場している日本企業にIFRSの適用が求められます。

 IFRSによる財務報告は、日本ではいわゆる「2007年問題」としてよく知られています。2007年問題とは、日本基準とIFRSに同等性がなければ、EU域内で日本基準による財務諸表が認められないおそれがあるという問題です。この問題に対処すべく、日本では近年急速に会計基準の開発が行われてきました。ストックオプション会計基準も2007年問題への対処の一つです。

 しかし、我が国のストックオプション会計基準では、IFRSといくつかの差異が存在しています。以下は欧州証券規制当局委員会(CESR)が、日本基準とIFRSとの同等性評価を行った結果として指摘した差異です。

�権利行使までの間、ストックオプションの貸方項目が負債の部と資本の部の中間項目として表示されること。

�現金決済型の取引を扱っていないこと。

�未公開企業において本源的価値による測定が容認されていること。

 このうち、�は公開草案の段階では存在しましたが、現行の会計基準ではストックオプションの貸方勘定を純資産の部に表示することとしたため、差異は解消されています。
 また、�については、現在の日本基準では取り扱われておらず、今後の実務で現金決済型の取引が普及した場合に取り扱われると考えられます。
 �について、IFRSでは公開・未公開企業を問わず、公正価値が信頼性をもって見積もれない場合は継続的に本源的価値で測定することとしており、継続的な測定を求める点で日本基準と差異が存在します。

 このような指摘を受けて、日本基準により財務諸表を作成する企業は、IFRSとの差異に対する補完措置が必要とされました。2006年現在では、補完措置として質的・量的情報に関する注記が盛り込まれています。