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2006年09月01日

●SO評価モデル選択への示唆

ここでは以下の3点について考察します。

�オプション評価モデルの種類
�各モデルの特性
�ストックオプション評価モデル選択への示唆

�オプション評価モデルの種類

オプション評価モデルには、大きくわけて2種類のタイプがあります。一つ目は直接解析解を導き出す方法です。この方法は数式で理論価値がいくつになるのか表現します。これは普遍的なもので高い客観性を得ることができますが、ブラックショールズ等広く受け入れられているもの以外では、その妥当性の判断に数学者並みの知識が必要となってしまいます。また数学の技術的な問題で、解析解が得られない、つまりちょっとした条件がつくことで解けなくなってしまうことが多々あります。
二つ目は数値的に近似をするというものです。さらにこの中で二項モデル(ラティスモデル)とモンテカルロシミュレーションの二つに分かれます。二項モデルは、株価は一定の割合で上がるか下がるかのどちらかであり(ランダムウォーク)、それが連続していく仮定を表現します。その上にオプションの利得を描いて行って、最終的に割引価値を求めていくものです。一方モンテカルロシミュレーションは、株価の動きを幾何ブラウン運動(株価の収益率が時間とともに常に正規分布になっていくような動きです)で捕らえ、コンピューターで何万回、場合によっては何十万回と株価の動きを実際に作ってみてシミュレーションするものです。


�各モデルの特性

どのモデルを使うかを考える上では、各モデルの特徴を比較しなければなりません。代表的な軸となるものには以下があります。

○理解
一般的な第三者が見て理解しやすいかどうか

○経路依存
ムービングストライクなど、オプションの利益がその時点の株価だけでなくどのような動きをしてきたかに依存する商品に対する評価のしやすさ

○アメリカン
権利行使が満期以前にも可能な商品(アメリカン・オプション)に対する評価のしやすさ

○多資産
参照資産が複数存在する商品に対する評価のしやすさ

これらの軸に沿ってモデルを比較すると、次のような表になります。

6-7-1.gif

注1)解析解でどの評価ができるかというのは、さらに細かい条件によってケースバイケースとなります。

�ストックオプション評価モデル選択への示唆

ストックオプションを評価する場合どのモデルを選択することが最適なのでしょうか。上記の表をふまえると基本的にモンテカルロがよさそうです。通常のオプションと違いストップオプション評価の場合は説明責任というものが慣用になってきます。第三者による理解がかないやすいというのは、それだけでも大きなメリットです。モンテカルロはアメリカンタイプのオプション以外なら非常に幅広く評価ができるという強みをもっています。さらにアメリカンオプションは、ヨーロピアンオプションと価値が同じになるということが多々あります。よって実務レベルでのモデル選択では、基本的にモンテカルロで行うこと、そしてアメリカンの特性が大きな影響を与える場合は必要に応じて二項モデルを取り組んでいくことがいいのではないでしょうか。