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2006年07月20日

●新株予約権、SOの売買時の課税関係

所得税施行令84条に該当するストックオプションを、権利行使する前に売買した場合の課税関係について。ストックオプション自体の譲渡のため、譲渡所得課税が成り立つか否か。

下記にて説明します。

1.所得税施行令84条の趣旨
所得税施行令84条に該当するストックオプションを発行した場合、取得者である個人は、そのオプション価値相当額の経済的利益を享受したものとして、本来的には所得税法第36条第2項により、付与時の新株予約権価値に対して課税(給与所得等課税)が生じます。
しかし、ストックオプションは属人性が強く、譲渡禁止としていることが通常です。かような場合には、換金性がないものとして経済的利益は生じているものの未実現であるとして、付与時には課税せず、課税時期はその経済的利益が実現した時、すなわち権利行使時に課税するものとしています。また、課税金額は、「権利行使時の株式時価−(新株予約権取得価額+権利行使価額)」としています。この2点が所得税法施行令84条の趣旨と考えられます。
平成18年税制改正では、同条に「当該権利の譲渡についての制限その他特別の条件が付されている場合」という文言が確認的に新たに加わり、上記の趣旨を条文上に確認的に明示しています。

2.譲渡禁止のストックオプションを譲渡したときの課税関係
譲渡禁止条項のあるストックオプションを譲渡するには、譲渡承認決議を取締役会で得て、そのうえで割当契約書の譲渡禁止条項を撤廃する必要があります。
譲渡承認決議があったとき、所得税施行令84条の「当該権利の譲渡の制限」が消え失せ、同時に所得税第36条第2項に立ち返り、その時の経済的利益(新株予約権価値)に対して課税(給与所得課税等)が生じるものと考えられます。
新株予約権自体の譲渡として、譲渡所得課税が生じるという解釈も考えられますが、譲渡禁止条項の付されているストックオプションであれば、上記のような課税関係が生じます。